砥上裕將「線は、僕を描く」感想 映画と比べてみた


砥上裕將さんのデビュー作「線は、僕を描く」読みました。

水墨画の話です。

何年か前に先に映画を観てからの読書でした。

続編が出たらしいので、早く読まなくてはと思って。




家族を失い真っ白い悲しみのなかにいた青山霜介は、バイト先の展示会場で面白い老人と出会う。その人こそ水墨画の巨匠・篠田湖山だった。なぜか湖山に気に入られ、霜介は一方的に内弟子にされてしまう。それに反発する湖山の孫娘・千瑛は、一年後「湖山賞」で霜介と勝負すると宣言。まったくの素人の霜介は、困惑しながらも水墨の道へ踏み出すことになる。第59回メフィスト賞受賞作。


生きているか死んでいるかわからないような青山君が、湖山先生と出会って救われて、やっと少し生き始めた話です。

殻に閉じこもりながらも、水墨画に夢中に取り組む姿に胸を打たれます。


先に映画を観ていたので、つい比較しながら読んでしまいましたが、配役をまとめておきます。


青山霜介・・・横浜流星(主人公・大学生)

篠田湖山(こざん)・・・三浦友和(水墨画家。日本を代表する芸術家)

篠田千瑛(ちあき)・・・清原果耶(水墨画家。湖山の孫)

西濱湖峰(こほう)・・・江口洋介(水墨画家。湖山門下の二番手)

斉藤湖栖(こせい)・・・-(水墨画家。湖山賞最年少受賞者)

藤堂翠山(すいざん)・・・富田靖子(水墨画家。湖山も一目置く絵師)

古前(こまえ)・・・細田佳央太(霜介の親友)

川岸・・・河合優実(霜介と同じゼミ)


藤堂翠山さんは、ドラマでは富田靖子さんで水墨画の評論家という役どころ。でも原作では湖山先生と同じく著名な水墨画家、おじいちゃんでした。

そう思うと、芸術家の名前って、男とか女とか関係ないというか、どちらともとれる名前なんですね。


湖栖さんは、原作では完璧な技術を有する先生で千瑛を直接指導しているのだけど、映画には登場しなかったかもしれません。


それから設定で違う所は、青山君には妹がいて、両親と妹と3人を災害で一度に亡くしたのだったと思います。

家も流されたのじゃなかったかな。


原作では、青山君は高2の時に、事故に遭って、両親だけが死んでしまった。

叔父さん宅に引き取られたけれど、何もできなくなってしまって、食事もほとんどしなくなり痩せこけて叔父さんもお手上げ状態だった。

エスカレーター式にサインだけしてなんとか大学生になったという設定でした。


大学でもやはり死んだようだったけど、古前君が何かと連れまわしてくれて、人生初めてのバイトで湖山先生と水墨画に出会うのです。

ありがとう古前君。

あなたは、青山君の命の恩人です。


青山君は頭の中では、初めは横浜流星君なのだけど、あまりに生気がないので、だんだんそのことを忘れて読んでいました。

今にも風に飛ばされてどこかへ行ってしまいそうな、そんな危なげな青山君。

千瑛が青山君の部屋に行った時、部屋には家具らしきものが何もなくて、壁にはお手本が飾られ、書き散らかした水墨画だらけで、まるで狂気です。

青山君は、朝起きて墨をすって線を描いて、夕方になると朝食と昼食を兼ねた夕食を食べる。

そんな日々をひたすら過ごす。

そんなことできますか?

まさに狂気です。

だけど、芸術家ってそんなものなのでしょうね。

常人には理解が及ばない。


私なんて、そんな生活したら瘦せられるだろうな…と思うばかりです。



さてさて、続編はどんな話なのでしょう。

青山君と千瑛さんの恋の話でもあるのでしょうか…。

あるといいな。






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