天祢涼「キョウカンカク」「キョウカンカク 美しき夜に」読み比べ

天祢涼さんの「キョウカンカク」続いて「キョウカンカク 美しき夜に」読みました。
この2冊、シリーズものだと勘違いしていたのですが、「キョウカンカク」は、天祢涼さんのメフィスト賞受賞のデビュー作で、「キョウカンカク 美しき夜に」は文庫化の時に改題し、全面改稿されたものでした。
つまり同じ本。
と言っても、設定からして変わってしまっています。
そんなことがあるのですね、そこにまず驚きでした。
文庫化にあたって、タイトル変更というのはよく見ますし、少し付け足しました、みたいなものも読んだことがあります。
でも、この物語の場合、登場人物の名前が変わっているし、人物相関も変わっています。

死体を燃やす殺人鬼・フレイムに妹を殺された天弥山紫郎(あまやさんしろう)は、音が見える探偵・音宮美夜(おとみやみや)と捜査に乗り出す。美夜は殺意の声を見てフレイムを特定するも、動機がわからない。一方、山紫郎は別の人物を疑い……。ホワイダニット(動機のミステリ)の新たな金字塔が登場! 第43回メフィスト賞受賞作を全面改稿。
【文庫】 改稿版
天弥山紫郎(あまや・さんしろう)
天弥花恋(あまや・かれん)・・・山紫郎の妹
神崎玲(かんざき・れい)・・・山紫郎が通う合気道の道場の先輩で、天弥家とは家族ぐるみの仲良し
花恋は玲に片想い。
【ノベルス】
甘祢山紫郎(あまね・さんしろう)・・・花恋のことが好き
神崎花恋(かんざき・かれん)・・・山紫郎の幼なじみの同級生
神崎玲(かんざき・れい)・・・花恋のいとこ
3人は幼馴染。
こんなふうに、設定が変わっています。
好きな子が殺された山紫郎だったけど、大切な妹が殺された、に変わりました。
基本の設定が変わってしまったので全面改稿。
全面改稿するために設定を変えたのか。
本当に最初から最後まで、いろいろと変更されていました。
変わったところを意識しながら読むという、なんとも不思議な体験でした。
『キョウカンカク』は、漢字で書くと『共感覚』。
文字に色が見えたり、音に匂いを感じたりする、特殊な知覚現象のこと。普通の人が刺激を受けると反応する感覚に付随して、別の感覚も反応すること。
他の小説でも読んだことがあるし、ドラマでも見たけれど、実際に共感覚というものは存在するらしいです。
10万人に1人程度か、もっと多いとも言われているようです。
絶世の美女で、銀髪という強烈なキャラ・音宮美夜(おとみや・みや)は音を聞くと色や形が見える。
そんな共感覚の持ち主・音宮美夜は警察に依頼されて事件を調べているのですが、周囲の音や声すべてに色や形が見えてしまうので、普段は特殊なコンタクトレンズを入れて、見えないようにしています。
それでも見えてしまうのが、自殺をしたがっている人と、人を殺したいと思っている人。
人殺しが見えるわけだから、犯人特定も、証拠がなくてもできるのです。
ただやっぱり裁くには証拠がいる。
犯人はどこにも証拠を残していないから。
しかも犯人がわかっても動機がわからない。
人を殺したい色が見えているから、あいつが絶対に犯人だと言っても周りはわかってくれない。
なかなかのジレンマです。
動機がわかって、信じられないというか、なんとも嫌な気分になりました。
警察の矢萩さんも訳ありなようで、それは次作を読めばわかるのかどうか…気になります。
次は、『闇ツキチルドレン』読んでみたいです。