歌田年「紙鑑定士の事件ファイル 紙とクイズと密室と」シリーズ3作目 感想
歌田年さんの「紙鑑定士の事件ファイル 紙とクイズと密室と」読みました。
紙鑑定士シリーズ
- 紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人
- 紙鑑定士の事件ファイル 偽りの刃の断罪
- 紙鑑定士の事件ファイル 紙とクイズと密室と
どんな紙も見分けられる紙鑑定士・渡部は、紙業界誌の“紙人32面相”クイズを懸賞目当てに解きながら、今日も様々な事件に巻き込まれる。学習塾で起きたカンニング事件の真相とは?「さわるときけん けがするで」物騒な怪文書を作った犯人は、どうやって密室の建物に忍び込んだ?事件とクイズを解明していった渡部は、“紙人32面相”から協力を請われ、とある怪死事件の謎も解くことに…。『このミス』大賞大賞受賞作。
シリーズ3作目です。
このシリーズは『このミステリーがすごい!大賞』の大賞受賞作で、歌田年さんのデビュー作になります。
約1年前に、本屋さんでたまたま手に取ったのが出会いです。
紙鑑定士というものがそもそも初耳でした。
紙の専門家。
紙を見て触るだけで、どこのメーカーのどの紙というのがわかるようです。
面白いです。
例えば本を作るときに、表紙はこの紙、本文はこの紙と、提案し紙を確保し売る、そういう仕事のようです。
主人公の渡部は、独立して一人で会社を切り盛りしているのですが、出版業界の低迷もあって、いつも金策に苦労している設定です。
そして事件に巻き込まれる。
自分から首を突っ込んでいる気もします。
もはや探偵が副業のようになっている。
紙業界でも、探偵・渡部がうわさになっているようで、過去に大きな事件を解決したとか、謝礼を払えばそういう依頼を受けてくれるとか、まさに探偵です。
元恋人の真理子にも、そっちの方が向いてるなんて言われたりして、本人もその気になっていたりして…。
事務所の看板に探偵を掲げそうな勢いだけど、個人的には紙鑑定士も頑張ってほしい。
今は本も売れなくなっているし、電子書籍も浸透しているし、オーディオブックなんかもあるけど、便利だとは思うけど、やっぱり紙の感触やページをめくるのが好きです。
私は結構行ったり来たりしながら読むので、紙です。
今回の事件ですが、
- クイズと密室と紙と
- 紙と密室とクイズと
- 紙とクイズと密室と
そんな目次です。
なんのことだかさっぱりだけど、つまり『紙』と『クイズ』と『密室』の話です。
最初にとある雑誌で賞金10万円の密室クイズが出されていて、渡部は金欠だから、是非それをいただこうと、密室についてずっと考えているのです。
「クイズと密室と紙と」
ここには、土生井が登場します。
渡部と土生井との共同開発企画、“ディオラマ運搬用紙器”なるものが進んでいるのです。
展覧会などに出品するのにジオラマを運ぶための紙器だそうで、需要はあるとのことなので、これはうまくいってほしいです。
渡部紙鑑定事務所のよき収入源になるといいなぁ。
ここで起こるのは、小さな個人塾の生徒たちのカンニング事件。
カンニングしているのは間違いないけど、どうやっているのかがわからない、というもの。
たまたま土生井に雑談程度に話を聞いて、ゆるーく考えて閃いて。
こういうゆるさがこのシリーズの好きな所でもあります。
考えるとはなしに考えて、(実際は暇にまかせてかなり真剣に考えていますが)答えを導き出す。
「紙と密室とクイズと」
図書館と古本屋の本からカミソリの刃が見つかる事件です。
ここには石橋刑事が登場。
取引のある出版社の人間が容疑者になったものだから、石橋刑事から情報を得ながら、自分からどんどん首を突っ込んで行きます。
石橋刑事と、ずいぶん仲良くなったものです。
「紙とクイズと密室と」
ここで雑誌のクイズの本当の理由がわかります。
3年前に自殺した姉、実は殺されたんじゃないかと、犯人をあぶり出そうとしていたのです。
これはかなり嫌な事件。
予備知識として、太宰治をよく知っているとよかったかもしれないですが、私も映画とかドラマとかで少し知っている程度なので、ちょっと残念だったかな。
そして渡部と真理子の関係は…進展しないのでしょうか?
お見合いするという真理子に心中穏やかでない渡部だけど、元サヤはないのかな。
今後も続くシリーズだと思うので、そこも見守りたいです。
それにしても、紙に関することだけでも、意外に事件はあるものですね。